番匠幸一郎:「日本を守る陸上自衛隊」
今月の一節「今女は画れり」
冉求(ぜんきゅう)曰はく、「子の道を説ばざる(よろこばざる)にあらず。力足らざるなり。」
子曰く、「力足らざる者は中道にして廃す、今女(なんじ)は画れり(かぎれり)。」
冉求が「私は心に先生の御教えを悦ばないのではありません。性質が愚かで進んで御教えに従おうと思いますけれども、力が足りないのでございます。」と曰ったので、孔子がこれを戒めて「力が足りない者というのは、力を用いて進み求めて、中途になって力が足りないで止めてしまう者である。汝は力がありながら、進み求める心がないので、初めから己の力を限定しているのだから、力が足りない者とはいわれないのである。」といって、進んで道を求めるように励ました。
・引用テキスト:宇野哲人著『論語新釈(講談社学術文庫)』
第一回からの参加者として、また三度の講師として
番匠陸将は第1回からの参加者であり、また講師としても第3回(テーマ、武士道と自衛隊)、第40回(テーマ、陸上自衛隊幹部候補生のリーダー教育について)と過去2度にわたり当会の講師として登壇頂き、このたび3度目の出演となりました。
これまでの功績を称え、代表幹事の田村より、記念の楯と副賞(伊豆下田銘菓「下田マダム」)が贈られました。
論語に始まり、孫子で結ぶ
開催冒頭の素読テキストは、代表幹事の田村が時節や講演テーマに即した一節を毎回選んで皆様へ紹介しています。今回選んだのは講演テーマに相応しい、自衛隊に期待される要素として取り上げました。
番匠副長からは、自らも論語を実践し、自衛隊を率いるリーダーとして体験を踏まえた講演を頂きました。
講演の前半では、先の東日本大震災で獅子奮迅の活躍を見せた自衛隊の舞台裏、同盟国としてトモダチ作戦(Operation”TOMODACHI”)を遂行した米軍の心意気(A Friend inneed si a Friend indeed)に対する感謝や日米間の絆についてもお話いただきました。
防衛省、陸上自衛隊とは?そして、陸上自衛官とは?
2つの「61期生」・・・「陸軍士官学校」と「防衛大学校」
当たり前のことの大切さ。
ABCDE(当たり前のことを、ビシっと、ちゃんとやる。できるだけ笑顔で)
そしてGNN(義理と人情、浪花節)
この時代に生きる者としての「時代の責任」
番匠陸将は論語のみならず、孫子兵法の実践者としても国内外に広く知られています。
結びでは「孫子」始計篇第1より次の一節を紹介頂きました。
「兵は国の大事にして、死生に地、存亡に道なり。察せざるべからず」
戦争は国家の重大事であって、国民の生死、国家の存亡がかかっている。
それゆえ、くれぐれも慎重に対処しなければならない。
当日のハイライト動画
今回の講演ハイライトをYoutubeでご覧いただけます。
動画の中で語られる二つのエピソードについては、ぜひ皆様にも想いを巡らして頂けると幸いです。
「うみちゃんからの手紙」
「吉田茂内閣総理大臣が防衛大第1期卒業生に贈った言葉 」
君達は自衛隊在職中、決して国民から感謝されたり、歓迎されることなく、自衛隊を終わるかもしれない。きっと非難とか誹謗ばかりの一生かもしれない。
御苦労だと思う。
しかし、自衛隊が国民から歓迎されちやほやされる事態とは、外国から攻撃されて国家存亡の時とか、災害派遣の時とか、国民が困窮し国家が混乱に直面している時だけなのだ。
言葉を換えれば、君達が日陰者である時の方が、国民や日本は幸せなのだ。どうか、耐えてもらいたい。
一生御苦労なことだと思うが、 国家のために忍び堪え頑張ってもらいたい。 自衛隊の将来は君達の双肩にかかっている。
しっかり頼むよ。
1957年(昭和32年) 第1期卒業生の平間洋一(元・海将補)氏ほかに掛けた言葉。
この言葉に感激した平間氏は総理の言葉を第1期生全員へのメッセージとして受け止め、卒業生の間でも「もう一つの訓示」として語り継がれているそうです。
平間洋一研究室「大磯を訪ねて知った吉田茂の背骨」(『歴史通』23年6月号)
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